2021-01-01から1年間の記事一覧

窓に露わな指紋

前に無くしてしまった本を古本屋の特価棚で見つけた。ゴシックのアンソロジーで特に女子高生のゾンビが登場する話しが良かったと記憶している。もう一度、読みたかったから嬉しい。 本を買って、店を出ると夕方の帰宅ラッシュで街は忙しい。僕も忙しい1人に…

意志とかく在れと

大学1回生の春、君と初めて会った日、物心つく前の記憶のような画質で網膜が君を写した。 君に声をかけて少しだけ談笑をすると「なんだかあなたに見覚えがあるの」と君が呟いた。その時、僕は確信を持って運命を信じられた。 帰りに新宿駅のプラットフォーム…

優しすぎる人

ところで彼女が僕をほんとうに愛しているかどうか、僕には知る余地がない。 デートの予定が恋人の体調不良で急に中止になった時、心配な気持ちでいっぱいになるはずだった。それなのに今回はなんだかそんな気持ちにはなれなかった。 あなたは僕のこと純粋で…

気がついていたけれど気が付かないフリをする

秋葉原のメイン通りを一本入ると喧騒を忘れたように静かだ。自粛の影響もあるだろうけどメイドの客引きも少ない。夕食に友人とケバブ屋に立ち寄る。テイクアウト専門で店前にベンチが並べらていてそこに並んで腰をおろす。ふと見上げると高いビルとビルの間…

文字を眼で追う

文章を読む時に声を出すよりも眼で追った方が速いと気がついたのはいつだっただろうか。 古い記憶を辿ってみるがモヤがかかったように清明さに欠けてしまう。ただ、幼稚園の読み聞かせの時に、なんてタラタラと読む先生なのだろう(勿論、当時はこんな語彙を…

選択肢に生じる幻肢痛

冬、高架の上。「満月だ」と子供のはしゃぐ声がどこからか聞こえる。ふと見上げると限りなく満月に近い月。 膨らませてあげられたらいい、そんなことを考えていると空気栓見つけた。異様に透き通った空に夢だと気がつく。 目を覚ますとカーテンの隙間から霞…

思索的23時58分

初恋の子の誕生日だったことに気がついたけれど、あと2分で明日。 8年も会っていないのに思い出してしまった。彼女のことを忘れられたと思っていたんだけど、きっと来年には思い出さずにいられるはずだ・・・ なんて思いながら日にちを越していた。

ありふれたこと

時と共に色はあせる。どんな名画でも色彩は落ちていく。それは、記憶も例外ではない。だから色あせた記憶を着色する。忘れてしまわないように。出来るだけ近い色で。 だけど、同じ色で着色することはできない。きっと今、僕が大切にしている記憶は色を何層に…

死なうは一定、しのび草には何をしよぞ、一定かたり遺すよの

先がないことを知っていながら言われるままに生きてきた。やりたいことなんて許してもらえなくて考えることをやめてしまった。そのせいか、今では何がやりたいのか何にもわからない。何かやりたいことを見つけたとしても先がないとわかっているから見つけた…

ある種の悲惨な現実はプラダクツを持って語る

とある反出生主義者Aの偏見 A「人間は誰しも生まれながらに平等であるとは限らない。それに生まれてきた人物に干渉することはできないからね。」 B:「干渉できないってどういうこと?」 A:「例えばある物語を作っているとしたら主人公の未来を自由に操ること…

差異のないものの存在意味があるのか。

4日後に首を吊ろうと考えていたのに感情が平板化しているせいか世界が綺麗に見えるでもなく、汚れて見えることもない。ただ、苦しさだけが存在している。死が4日ずれることに何の意味があるだろうか。 須原一秀は65歳で自死を選んだ。絶妙な年齢だ。65歳以降…

死に損ないの夏

8月末の昼下がり。妙に肌寒い日だった。夏が死んでいくことを想像しながら僕は昆虫ゼリーを棚に並べていた。半分程.並べ終わった頃にお客さんに声をかけられた。白いTシャツに薄いインディゴのジーンズ、水色のビーチサンダルを履く大学生ぐらいの女性だった…

アノマロカリスに想いを馳せてアルテミアを沸かす。

配布物を回すように彼女は僕に小脳を手渡した。先ほどまで標本瓶に保管されていたため、ホルマリンが滴っていた。どんな手触りなのかと想像を凝らしながらそれを受け取るとヌルッとしていて、想像を逸脱しない手触りだった。彼女は「大したことなかったね」…

名もなき登場人物

この世界は僕の考えた物語であると考えると良い。勿論、僕とはこの文章を書いている僕ではなく、物語の中に自分を投影してしまった僕である。 僕はスーパーで買い物をしているするとある2人の人物に声をかけられた。(名前を知らないのでaとbとしよう。)2人の…

勉強嫌い

勉強はつまらない。なんでだろうって考えていて気がついたことがある。 何かを疑問に持ったり自分では説明がつかなかったことを発見したりすると好奇心が疼く。答えなんてわからないけれど仮説を立てて分かろうとする過程は楽しい。けれど、模範解答を調べた…

川逍遥

朝焼けの空、川辺の木々、空低く携えた雲。凛とした空気と川面に浮かび上がる。 水の綾を見た。同時に先ほどまでの世界を姿を消した。 儚さに惹かれる。決して見続けることのできない景色。刹那のうちに消え失せてしまった景色。それを、記憶の中で見続ける…

解剖学教室でステンレスの台に置かれた上腕や足部、小脳や脊髄を見て、まるで人形の部品のように感じたことを思い出した。

今、妙に座席の狭い電車に揺られながら、私は人間と人形の違いは何処にあるのだろうと疑問を持った。 死んでいなければバラバラにできないという点で大きな差があるのかもしれない。運搬する上でバラバラに出来ることは便利だし、利口だ。 バラバラに分解さ…

今、みているもの

ある程度の事象は思考によってその姿を変えると言える。けれど、時に現実が思考を凌駕した姿で表す。この時が最も無防備な状態ではないか。

情死に憧れる

永久的なものは何かと考えることがあるけれど、あまりにも見つからない。そのかわり、確実に持続性のないものは簡単に見つかる。その例として「愛」がある。初恋が成就したという人がいるだろうか?また、成就したと思っていても相手はどうだろうか?きっと…

最後の魔法で世界が綺麗

イチモツを出して棒に振ると希死念慮を表出した友人が言うものだから笑ってしまった。ジョークのつもりじゃなかったみたいで「俺は死ぬ。さようなら」と電話を切るものだから焦る。 取り敢えず、110番しました。

20歳で死ぬつもりなのだから今死んでも変わりがない

今とは何処を指す言葉なのか。主体にとっての確実な現実を指しているものに思える。 例えば、「aがaである」と主観的に自信を持てるものが今だ。 20歳の自分と今現在の自分が同一であると確実性を持って話すことはできない。だから、20歳の自分が他人である…

明日には忘れる恋

夢の中で美しいフレーズを口ずさむ人に出会ったのだが、そのフレーズにノイズがかかっていて思い出せない。

懐疑が不可能な問の答えを探して本を読む。

初めてシュープペンを使い出した時に鉛筆への興味が消えた。 毎日手入れをして大切にしていたはずなのにも関わらず、シャーペンに興味が移った。そのことを非常に悲しいと感じていたのだが、以前のように鉛筆に興味を持ち大切にすることできなかった。そして…